[米穀新聞]“五穀米”を商品開発と掲載されました。
今回訪問した石川商店は、JR君津駅から3kmほど東へ行った郊外の住宅地の中にある。周辺には農地もあり、旧農家らしい屋敷林を持つ広い敷地の住宅も少なくない。
この店も昭和30年代まではコメの生産もしていたという。そして、先代が72年にコメ、灯油、プロパンガスを扱う会社組織の小売店とした。が、このころまでは、どこにでもある普通の米穀店であった。
現社長の大になり、88年の店舗、工場の新装を契機に、この店は普通の米穀店から脱皮する。店舗改装を依頼した建築事務所のアドバイスもあり、「健康」を見せづくりの基本テーマとして明確に打ち出す。まさに、第2の創業とも言える転機を図った。今でこそ、食品業界では「健康」や「安全」がキーワードになっているが、当時は、バブル経済の真っ最中で、世の中はグルメブームに沸いていた。
その時代に、この店が「健康」をテーマにしたのにはもう一つ理由がある。それは、その頃、先代ご夫妻が50才そこそこの若さで、次々に成人病で他界したことである。それを目の当たりにして、健康、それも食の基本とする健康生活の実現を経営理念とし、世の中に普及させることが店の存在意義と認識した。
そして、その「健康」路線で、この店を一気に飛躍させたのが「五穀米」の商品化である。普通、五穀と言えば、米、麦、豆、あわ、きびの5種類の穀物を指す3合パックが玄米食派や健康志向の消費者に受けてヒットした。
そこで、その後この店では、レトルトパック(ごはん、おかゆ)、切り餅、パンなどの「五穀米」の様々な商品をシリーズで開発した。また、同時に「古代米(黒米、赤米)」、玄米胚芽などの商品ラインナップもそろえてきた。これらの商品は、この店が企画及びプロデュースを行い、製造は「健康」や「安全」という考え方を共有できる各地の食品メーカーに委託している。
この店では、すでに市場に出回っていた雑穀米などの類似品と区別するため、先の9種類いの穀物をブレンドしたものを「五穀米」として商標登録した。この戦略が正しかった。つまり、この後、大手食品メーカーや外食産業などが、雑穀をブレンドした米を商品化したり、原料・食材として使う動きが出てきているが「五穀米」というネーミングは使えない。
また、有機肥料で栽培した何種類もの雑穀を調達するルートの構築も一朝一夕にはできない。自ずとこの店と商品化で提携せざるを得ない。そのため、ここ数年、大手百貨店や通信販売会社と提携し、通販チャネルを中心に販路開拓が進んだ。その結果、健康志向の追い風もあり、食品業界や消費者の「五穀米」に対しる認知も深まり、この店の経営にとっても五穀米関連商品が売り上げの3割以上を占める大きな柱に成長した。
また、このような商品開発だけではなく、健康や食に係わる知識や技能の蓄積にも注力している。それは、「健康生活の実現」は、消費者の食に対する意識改革から始めなければならず、また、食生活や食材に対する消費者からの問い合わせも多いためである。そこで、この店では、自然食の会や美容講座を開催したり、経営者自らが自然医学やアレルギー料理講座を受講したり、「健康指導師」(日本健康指導研究会)の資格を取得したりと、精力的にソフト面の充実を図ってきた。
さらに、東京ビックサイトで開催される「健康博」にも出展し、「五穀米」および関連商品の認知を高める情報発信をするとともに、健康関連の諸企業とのネットワークの拡大に努めている。