[米穀新聞]に当店が掲載されました。
「健康」コンセプトと「五穀米」の商品化で飛躍した石川商店(千葉県君津市)であるが、次なる商品開発にも余念がない。この店が、いま最も力を入れているのが【がんばれごはん!!シリーズ】として販売を予定している「超高圧無菌パック米飯」である。
この商品は、京都大学大学院農学研究所の林力丸教授の研究グループが開発した食品の超高圧処理技術を無菌パックに応用したものである。超高圧処理食品は、すでにジャムや飲料、生ハムなどで商品化されているが、加熱加工に比べて食材の風味や栄養を損なうことなく、また、焼け焦げなどの有害物質の発生の心配もない。また、添加物を使わずに無菌化が可能である。
コメを超高圧処理すると米細胞の芯まで水が浸透しすることにより、モチモチ感や甘みが増し、レンジ加熱でかまど炊きに勝るとも劣らない食味が味わえるという。手軽に食べられる無菌パックで、これだけの味が提供できれば、これはまさに「ごはん革命」であり、本当に炊飯器が必要なくなるかもしれない。
現在、この商品は製造ラインの最終調整段階にあり、秋口以降白飯パックから順次販売される予定である。この店では、同商品シリーズの五穀米の原料をメーカーに供給するとともに、自社ブランドでも五穀米、赤米ごはん、黒米ごはん、新潟こしひかりを販売する予定である。
いま、コメの消費量が減少し、価格が下落する中で、生米だけではなく、付加価値の取れる米加工食品を商材に持つことは、経営上の大きな武器になる。また、「健康」と「食味」、「簡便性」という現在の消費者の食に対するニーズを両立させて取り込んでいる点が、この店のマーケティング戦略の優れている点である。
これまで、五穀米や関連加工食品のことのみを紹介してきたが、この店のコメの品揃えも半端ではない。
成田、下総、大多喜など地元千葉県産をはじめ、山形、新潟、福島、佐賀などいずれも生産者とダイレクトな関係づくりから仕入れルートを開拓してきた有機・減農薬米がおよそ20種類並ぶ。
また、この連載でも以前紹介した福島・いわき市の米穀店・相馬屋から五穀米の提供とバーターで赤米、黒米の提供を受け、品ぞろえに加えている。
このような生産者や同業者との信頼関係に基づくネットワークがあればこそ、特徴的な品揃えが出来るとともに、五穀米の原料調達も可能であったといえる。
また、この店のコメの販売はほぼ全量が家庭用であるが、ただ、最近は地元スーパーへの仲卸業務のウエイトが徐々に増えてきており、現在は米販売の約3割を占めるまでになっている。仕入れロットをまとめる上では、スーパーの仲卸も欠かせない販売先だ。
これらのコメはその8÷を配達している。配達は、毎月20日から月末にかけて設定されたルートに従って行われる。その意味では、一種の米びつ管理であるが、固定客を掴んでいるこの店であればことできる仕組みである。そして、各顧客については、コメとともに調味料などのサイド商品や灯油、プロパンなどの購買履歴をパソコンで管理している。そして、配達時にはそのリストで商品をチェックして、勧めるように営業している。
もう一つこの店は経営目的に「田園を中心とする環境の保全に貢献する」ことを掲げており、最近は環境に係わる社会貢献活動にも力を入れている。コメに始まり、雑穀を含む穀物を主体とする日本の食文化を伝承し、「健康」をテーマにした商売を追求していくと、自ずと環境の問題に到達するということだろう。
「健康」「環境」という21世紀の日本にとっても非常に重要なテーマを経営理念として事業活動を行う中で、また新たな取引先や消費者とのネットワークが広がっていくような気がする。それがこの店の財産であろうし、新たなビジネスチャンスをもたらすことにもなろう。この店には妥協をせず、現状の路線を追求していってもらいたい。