「月刊消費者」休耕田で育つ雑穀に掲載されました。
アワやキビなどの雑穀が見直されています。数種類の座国をブレンドした小袋がごく普通にスーパーで売られていたり、雑穀にこだわるレストランも出来ています。
中高年には、マイナスイメージの雑穀ですが、若い世代にはコメのバリエーションのひとつとして受け入れられている様です。
「雑穀」と、ひとくくりにしたような呼び方ですが、穀物の統計上雑穀は、コメや小麦などと分けて、その他の穀類がひとまとめで扱われています。ですから、アワ、ヒエ、キビ、モロコシなどと中心に、最近ではアマランサスも加えられ、小粒穀物を総称して使われています。
また、雑穀を紹介している本などでは、大麦、ソバ、大豆、小豆、赤米、黒米、なども含めているものもあります。
「五穀豊穣」という言葉があるように、私たちの祖先は穀物や作物の豊作を神に願い、そして収穫を感謝してお祭りをしてきました。
それぞれの土地に適した穀物。作物を栽培していたのですから、神に捧げられる「五穀」は、その土地、その土地で種類が違っていて当然だったのです。五穀とか雑穀という場合には、種類にこだわる必要もないのかもしれません。
雑穀が注目されはじめたきっかけは健康ブーム。アレルギー症状の子どもたちに、代替え穀物として利用されていましたが、肥満や糖尿病といった生活習慣病が論議され、食品の機能が見直されたためでしょう。
現在は、国産の雑穀は7~8割が岩手県と言われていますが、国産品は供給が間に合わない状態になっています。平成12年度の食料需給表によれば、穀類の中の「その他雑穀」の国内生産量3万トンに対し、輸入量は55.1万トン、そのうち、4分の3が飼料用、約2割が加工用・粗食料という数字です。利用する場合には信頼できる販売店を裏ぶことが大事になります。
アワやキビは稲が育ちにくい中山間地で栽培されています。「白いコメ」に対して、これらの雑穀は「ヒエ飯」などという言葉で象徴されるように、昭和初期まで貧しい食事の代名詞のようになっていました。
雑穀の主産地である岩手県の北部は、寒冷でヤマセなどの被害を受け、コメの栽培に苦労してきた歴史があります。
この地方ではずっと雑穀を栽培し続けてきたのですが、作付面積はどんどん減少してきていました。しかし、この数年商品が伸びてきていることや、コメの減反政策による休耕田の活用などで、作付けや収穫量が増えてきました。
ヒエの場合では、全国の統計は取られていませんが、岩手県では県内の市町村単位の統計が出されています。1998年には作付面積64ヘクタール、収穫量100トンでしたが、2001年には作付面積が105ヘクタール、収穫量194トンにまでなりました。
岩手県二戸地方振興局農政部の話では、「雑穀はもともと、農薬や肥料は必要としない作物で、この地方では使っているという話は聞いていません」とのことです。
完全無農薬の有機栽培で、除草も手作業でする農家も多いということです。
息で吹き飛びそうな粒を見ていると、食べられるようにするには、大変な手間がかかっていることが実感できます。どの雑穀も機械化が難しく、手作業で収穫するんだそうです。コメは10アールあたり8俵から10俵もの収穫がありますが、アワやキビなどは10アールあたりで200~250kgしか取れません。
また、歩留まりも悪く、コメの歩留まりが90%、アワやキビは70%ほど、ヒエは40%にしかなりません。生産効率の点では非常に悪く、価格が高くなってしまいます。
雑穀と精白米の栄養成分を別表にしましたが、精白米に比べ、たんぱく質、食物繊維、ミネラルが多く含まれていることがわかります。
食物繊維やカルシウム、カリウム、微量で大事な栄養素と言われる亜鉛などは、今の日本人には不足しがちです。雑穀からはこれらの栄養おwバランスよくとることができるのです。
精白米に玄米や麦、雑穀などをプラスすると、料理のしやすさ、おいしさ、価格などの麺でもよりバランスの取れた食材となります。
雑穀の機能についての研究が盛んに行われ、血中の総コレステロール濃度や中性脂肪を定価させる働きがあることや、血栓を予防するなど、健康について効果があることがわかってきています。
肥満や動脈硬化症を心配し、足りない栄養素の補給をサプリメントに頼るよりは、雑穀を取り入れた食事を継続的にとることで、生活習慣病の改善に効果があると考えられます。
アレルギー症の代替食として利用されているように、抗アレルギー機能を持っていることが確認されてきましたから、これらの症状のある人にも雑穀は、安心して利用できる穀類です。
「五穀米」などの販売者の千葉県君津市の石川商店を訪ねて話を聞きました。
石川商店はお米屋さんです。蔵構えを残した店先には、精米したコメ、雑穀などが並び、奥では4人の女性が雑穀をホーローのバットに入れて、手作業で選別していました。
米屋さんとして精白するのが商売なのに、玄米や雑穀が身体によいことに気がつき、研究をしたということでした。
「雑穀はアレルギーの人が食べるもの、パサパサぼそぼそして食べにくいとの固定観念があり、敬遠されて誤解もされているので、栄養価とともに、おいしさもプラスしたものを」と、いろいろな配合を試しました。栄養成分とおいしさの満足できるものに仕上げたのが、9種類の穀類をブレンドした「五穀米」とのこと。
石川商店では岩手県の生産者と播種期の4月ごろに買い上げる契約をし、商品を企画し製造工場に委託して作ったものを販売しています。
「有機農法で作り、トレーサビリティがはっきりとわかる生産方法をとっており、現在岩手の農家150~200人の生産者、30~40アールの生産をしています。
徐々に拡大していき、これが、やがて日本の農業を守ることに繋がり、環境にも貢献しているということになると信じている」と語ります。
粒が小さいため、泥のかたまりや草の実などの異物混入が問題になるので、石川商店では収穫したもの全量を、手と目を使って除去・点検の作業をしているのだそうです。
玄米が主でそのまま圧力釜などで炊く「五穀米」と、白米と混ぜで炊く「福っくら御膳」などが売れ筋商品。白米に1割混ぜて炊くと、もちもちとした粘りと香りが新鮮でした。
安全志向と同時に、歯k枚と雑穀を混ぜると粘りのと深みのある味になり、味覚の面からもファンが増えてきています。白米にすこし雑穀を混ぜるだけで真っ白なご飯に比べて、ずっと美味しいご飯になります。
日本に古くからあった食材が見直され、同時に、その土地でとれたものを食していくことが体を元気にしていくと言われます。それがさまざまな研究で実証もされてきています。
ある若い主婦はアレルギー体質の家族のために、週に2回雑穀入りのご飯を炊くそうです。数種類の雑穀を使ったり、キビだけ入れたり。ご飯のバリエーションが増えて和食の献立も増え、家族がご飯好きになったのが大きな収穫と話していました。
いまは、健康ブームにのった感がある雑穀。しかし、栄養価に富み、食品機能としての価値のある穀物を、私たちは大事にしていかなければならないと思います。