「月刊米と流通」に石川商店が掲載されました。
「五穀米」「福っくら御膳」「麦の膳」で、自然といのち・食の原点を追求
「食」「米」の原点追求から「五穀米」の開発へ
(有)石川商店は、JR内房線・君津駅から東へ車で約6~7分の住宅地に立地する。
石川善雄代表の実家は代々農業を営み、先代は南子安の区長として自治会長も務めていた。君津は、八幡製鉄(新日鉄)の君津製鉄所創業を機に急速に発展し、当時、製鉄所食堂への米の配達(産直)も行っていた。
「米づくり」に関心を抱いていた石川代表は、高卒後、東京の第一経理専門学校へ進んでいたが中途で退学、米小売の免許を取得し、石川商店を引き継いだ。日本の米づくり、稲作文化、自然といのち、米を中心とした「食」と「健康」をテーマにした店づくりが第一の目標だった。
伝統の蔵造りを外装に、明るくモダンな店舗・工場・事務所の新装が成ったのは昭和63年11月。「雑穀」に興味を持ち、専門家の研修も受け、自らが産地の開発に取り組むことになったのも必然で、岩手県大迫町・東和町(現・花巻市)の中山間地の生産者を訪ね、熱心な農業指導員と巡り合えたことも大きな励みとなった。
登録商標・実用新案取得となった「五穀米」の3合パックの開発・発売を実現させたのは翌・平成元年3月のこと。
五穀豊穣の「五穀」とは、日本人が古来食してきた「米(玄米)・麦・豆・あわ・きび(あたは、ひえ)」の主要穀物のこと。普通の精白米に比べ、現代の日本人に不足しがちな各種ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富で、独特の甘み。モチモチ感・香りが楽しめる。しかも噛むことで歯と顎の健康にも良い、まさに「医食同源」の食材。
「五穀米」は、玄米・丸麦・はと麦・大豆・小豆・黒豆・あわ・ひえ・きびの9種類の穀物がブレンドされたもので、この「ブレンド(比率)」が実用新案取得に繋がっている。
同年6月には、店舗内に自然食品部門「ナチュラルマート(君津店)」を併設。自然食や美容講習会の定期開催を実現させている。こうした「米と食」「雑穀米と健康」への取り組みが評価され、日米振主催の平成元年度「第1回優良米穀小売店全国コンクール」では「農林水産大臣賞」を受賞している。
昨今の「雑穀米ブーム」で、産地では、米づくりに適した平坦地、治水工事や畔づくりが進んだ一等地での植え付けも多くなっているが、雑穀は畑地、中山間地などの耕作放棄地での栽培が適しているとのこと。一旦、水田に雑穀を植えると土壌が荒れ、米づくりへ戻すにはかなりの年月を要する。これは農業全体にも好ましいことではない、と石川代表は語っている。
平成9年1月、「五穀米ぱん」から五穀米シリーズの全国販売がスタート。4月「五穀米ごはん」レトルトパック発売。平成10年6月「五穀米おかゆ」(レトルトパック)発売を期に、米穀店向けの販売代理店「(有)五穀米販売」設立。また、東京ビックサイトでの「健康博」出店以後、「通販向け」展開を始動、販売ルートの充実に努めた。
翌11年2月には、「米・食味鑑定士」の資格を取得。定期会合を通じて「五穀米」の輪を広げている。
平成12年3月「福っくら御膳」の発売を期に、雑穀の契約栽培農家拡大を図っている。
同年3月、幕張メッセでの「FOODEX JAPAN」出店以降、「小売店向け」「業務店向け」を展開、販売網を拡げた。「福っくら御膳」は、計13種の雑穀で商品構成。うるち玄米、もち玄米、赤米、黒米、緑米、裸麦、胚芽押麦、もち麦、はと麦、たかきび、もちあわ、ひえ、もちきび。すべて国内産原料で「モチモチ美味・雑穀ごはん」が特色になっており、初年度は4ヶ月で品切れとなった。
平成13年9月には「金賞米シリーズ」を発売。米・食味鑑定士協会主催の「米・食味分析鑑定コンクール」で「金賞・優秀賞」を受賞した米=福島県産「熱塩こしひかり」・「無農薬・熱塩こしひかり」。山形県産「最上のひとめぼれ」・「最上のあきたこまち」・「最上のコシヒカリ」、熊本県産「七條ヒノヒカリ」の6アイテムを「こだわり米」として取り上げている。
平成14年9月、低温倉庫と原料精製室(異物除去室)を新設、品質管理の充実を図る。
平成16年6月には、関連会社として「(有)イーゼン」を設立。新商品企画・販路開拓に、長いことタッグを組んできた弟・雅彦氏との新たな両輪駆動が実現した。10月には、石川代表が「日本雑穀協会」理事に就任している。
平成17年11月、「金賞発芽玄米」を発売。福島・熱塩加納(現・喜多方市)産コシヒカリで、発芽率の高いのが特色。カタログハウス「通販生活」の商品にもなっている。
翌18年9月には「麦の膳」を発売・契約栽培による国産・もち麦・裸麦・押麦を使用したもので公表の新商品。
また、同月、店舗向かいに「雑穀選別(異物除去)工場」を新築。雑穀専用の選別機がフル稼働、増大する需要に対応している「雑穀にも精米技術が必要。精米用のシュート式は不向き」と語っている。
石川代表が岩手の産地・生産者を訪ねてから20年、米づくり・雑穀への取り組みを追求しあっての歳月だった。
「産地の土地よりも生産者の<人>を第一に常に考えてきた」と石川代表。雑穀も「在来種を大切にしたい」という。
「福っくら御膳」(雑穀13種)発売とともに契約栽培農家が拡大したお米では、山形・最上で借り受けた耕作放棄地が3町歩から70町歩にまでなっている。
岩手・山形・福島のほか、千葉・愛媛・熊本と産地・生産者との濃密な関係が続いているが、一朝一夕で成り立ったものではない。原料を見極め、提案し、責任を持って販売する。こうして培われた信頼関係の構築が、本物の商品づくりに結びついている。
また、米・雑穀だけでなく、野菜・果物・海産物など、産地の「特産品」を積極的に取り上げ、季節に応じてPRしている。山形のさくらんぼ、ラ・フランス、宮城の三陸わかめ、焼津の削り節、千葉・冨浦のびわ等は予約・注文が殺到している。
現在、米の扱い比率は、家庭用95%(うち百貨店への中卸45%)・業務用5%。雑穀の扱いはスタート時の5倍以上で売上全体の50%を占める。
スタッフのうち「雑穀エキスパート」が4名。全国で45名の「雑穀アドバイザー」の1人でもある紘史専務(長男)が叔父・雅彦氏に代わって石川代表をサポート。千葉県下の米穀店有志で構成する「CRF(コミュニケーション・ライス・ファミリー)」の定期会合にも参加、次世代を担うべく頑張っている。
「飽食の時代、食の多様化と簡便化、欧米化による慢性病・成人病と食生活が歪んでいる今こそ、日本人古来の穀・菜食を通して「食の健康」を訴えたいし、耕作放棄地での雑穀栽培こそ日本の農業の活性化に結び付く」と石川代表。「五穀米」のパイオニア石川商店の益々の頑張りに注目したい。